多摩の自然雑記帳 Vol.2(2009~2019)
2023.7.2掲載
多摩の自然雑記帳 Vol.2目次
師走の野草
温暖化のせいか師走になっても開花している野草を多く見かけます。散歩のついでにカメラに収めてきました。
左はセイタカアワダチソウです。かつて河原一面を黄色く埋め尽くしていましたが、今はそれほどの勢いはありません。右はヒメジョオンで春に咲くハルジオンとよく似ています。
左はセイヨウタンポポ、在来種のカントウタンポポは春に咲きます。町中で見るセイヨウタンポポはほとんど在来種との雑種と言われています。右はハキダメギクです。至る所に生えているという意味かと思いますが、ハキダメは死語になりつつあります。
左はノハラアザミ。春に咲くよく似た植物はノアザミです。右はコセンダングサで逆棘のついた実をつけ、衣服について困ります。分布拡大の戦略なんです。
気がついたら全部キク科の植物、しかもノハラアザミ以外はすべて外来植物でした。刈り払い圧の強いところは外来植物で占められる傾向があります。(1712)
ハハコグサ・チチコグサ
ハハコグサ(左)は春の七草の一つオギョウで古くは草餅を作るのに使われていました。牧野説では冠毛が毛羽立つところからホウコグサと呼ばれたことに由来するとされています。全草長い綿毛に覆われているのが特徴です。右はチチコグサで共に在来種。
この平和な親子の家族に最近いくつもの外来種が侵入してきています。左はウラジロチチコグサで、葉の表面は濃い緑色で裏面は白いのが特徴です。右はチチコグサモドキ、
上はタチチチコグサ(立ち父子草)。区別するのは難しいですね。この他、私は実物を未見ですが、セイタカハハコグサ、ウスベニチチコグサもあります。在来種のアキノハハコグサは絶滅危惧種に指定されています。ハハコグサ属(Gnaphalium)も賑やかになりました。(1705)
小さい春
古歌に”山里は 冬ぞ寂しさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば”と詠われていますが、地表で放射状に葉を付けたロゼット姿で冬を耐えている草もたくさんあります。今回は、寒中にも関わらず開花している植物を求めて歩いてみました。左はノゲシ、右はオオイヌノフグリです。
ほとんどがまだロゼットなのに茎をのばして開花しているハルジオン(左)を見つけました。慌て者がいるんですね。ホトケノザ(右)は春の七草のひとつで、早くも花を付けています。陽だまりの南斜面の草地を丁寧に探すと結構小さい春を発見することができます。 (1701)
千両・万両
名前が目出度いので、お正月の飾りに使われるセンリョウ(左)とマンリョウ(右)です。センリョウは暖地の林内に生え、赤い実が上向きにつきます。オレンジ色のものもあります。マンリョウも林内に生え、赤い実が下向きにつきます。栽培種には黄色や白色のものもあります。葉の縁が波打っています。百両(カラタチバナ)、十両(ヤブコウジ)、一両(アリドオシ)は俗称です。
ここからは名前つながりとはいえ、少々マニュアックです。いずれも町田市にはなく、相模原市の山中で撮影しました。神奈川県でも珍しいものです。左はイズセンリョウで、常緑樹の林内に生えます。葉の腋に白い実をつけます。右はオオバマンリョウで伊豆大島にあり、マンリョウよりやや大型です。センリョウだけがセンリョウ科で他はヤブコウジ科に分類されています。 (1612)
野菊
野菊を探しに出かけました。この仲間は分類が難しく、定まっていない部分もあるようです。花の色をはじめとして、冠毛の長短、葉や痩果の様子などを調べる必要があります。楽屋話はともかく、野菊に出会うのは意外と大変なことが分かりました。明るい道路きわで林の縁を好み、そのような場所はきれいに刈り払われていることが多いのも原因かもしれません。上左はカントウヨメナ、上右はシロヨメナ、下左はノコンギク、下右はリュウノウギクです。
ヨメナは本州以西に分布しています。忠生公園で見たのはカントウヨメナで、西日本のカンサイヨメナと区別されています。シロヨメナも広く分布している野菊です。山崎団地の小さな林で撮影しました。ノコンギクは小山内裏公園に植えられています。これら(Aster属)は花だけで区別するのは困難です。リュウノウギクは栽培菊と同じDendranthema属で、独特の香りがあります。この写真は栽培逸出の可能性があります。
最後はシラヤマギクで、左の欄に紹介しているオヤマボクチと一緒に生えています(三ッ目山公園)。茎下部の葉は葉身がハート形で長い柄があります。これはAsterです。この他ユウガギクと帰化種のホウキギクの仲間が町田で観察できるAster属の主な野菊です。(1511)
タネツケバナ
タネツケバナ(種漬花-上左)は普通に見られる植物で、種籾を漬ける時期に開花することから名付けられました。アブラナ科の植物で、花が終わると円柱状の長い果実(長角果)ができます。近い仲間にミズタネツケバナ、オオバタネツケバナ(上右)、タチタネツケバナなどがあり、分類の難しいグループです。
1990年代から写真上のミチタネツケバナが知られるようになり、瞬く間に勢力を拡大して、道路添いを中心にして、我が物顔をしています。長角果が開出せずに茎に沿って立つのが特徴です。物流が盛んになるとともに外国から多くの植物が入り込み、(1504)
ロウバイ
ロウバイを見に忠生公園臘梅園を訪ねました。ろう細工のような花びらが特徴です。中国原産の落葉樹ですが、花期にもかなり葉が残っています。12月末から開花しお正月に花見ができます。ウメの仲間(バラ科)ではなくてロウバイ科として分類されています。
ロウバイは中心の花びらが茶色くなり満月といわれるものがそれに当たるようです。忠生公園でマンゲツと名札がつけられているもの(左)でははっきりしません。色が抜けているのが素心臘梅だそうです。園芸的にはいろいろあって必ずしも明確ではありません。他に北米原産のクロロウバイがあります。これは6月頃咲きます。(1501)
最近見た蝶
左はアカボシゴマダラ。40年前の図鑑では奄美大島に分布する蝶でした。近年よく見かけるようになり、すでに関東一円に拡がっているようです。人工的に放蝶されたことがわかっています。右はツマグロヒョウモン。かつて本州西南部に分布していましたが、今や町田でも普通に見かけるようになりました。温暖化の影響かもしれません。雌は前翅の先(褄)が黒くなります。
左はミドリヒョウモン。今年何十年ぶりに相原で見かけました。山地の蝶かと思っていたのですが、久しぶりの出会いでした。右はメスグロヒョウモン。名の通り雌雄で模様が異なり、雌は地味な色をしています。小山田緑地で見ました。(1410)
樹木の花2014
三ツ目山公園の芝生広場に10本ほどのヒメシャラの林があります。何故かその西側だけ草の生え方が他と違います。そして年によって繁る草の種類も違うのです。数年前、最初に作業に入ったときはオオブタクサの林でしたが、今年はギシギシの大群落でした。それはともかく、ヒメシャラ(左)は落葉性のツバキで樹幹が美しいので、庭木としてもよく植えられています。近い仲間にナツツバキ(右)があります。この方が花も実も大きいので区別できます。
あまり見かけない木です。右の写真のように30cm以上にもなる長い実をつけます。形が似ているとしてキササゲと命名されました。といってもノウゼンカズラ科なので、種子はマメではなく平たく両端に長い毛があります。中国原産で「梓(アズサ)」の字が当てられ、材は版木に使われたので、本を出すことを上梓といいます。今井谷戸にあります。現在は伐採されてありません(2307)。 (1406)
春の野草2014
生えているのも気がつかないほどの野草に小さな小さな花が咲いています。デジカメで撮影するのは大変です。何回も撮り直してやっとこの程度です。小さいながらきちんと各パーツが揃っています。左はキュウリグサ、もむとキュウリの匂いがします。右はノミノツヅリ、葉が蚤の衣服になるほどという意味らしい。ともに一般には抜き去る雑草としか意識されていないかもしれません。
これはご存じの人も多いヒトリシズカ。茎の先に2対でる大きい葉と1本の花穂が特徴です。フタリシズカは2本の花穂がでます。花びらはなく雄しべと雌しべだけです。条件がよいとこんなに群れて生えることもあるんですね。ぺちゃくちゃと何だか「静か」な雰囲気ではないような気がします。この群れも今はありません(2307)。 (1404)
木の実2013
竹伐採が早く終わったので、寄り道をしながら帰りました。根岸の公園でイイギリ(左)が見事な実をつけていました。桐に似た大きな葉でご飯を包んだとかで飯桐。葉が落ちても実は残ります。相模原市の小倉山で自然樹を見ました。
右のクロガネモチ(黒鉄黐)はたわわに着いた実が美しく、公園や街路樹に植えられます。枝が乾くと鉄色になります。暖地では自生しています(次のセンダンも)。
左はセンダン(栴檀)、春にやさしい紫色の小さい花をたくさんつけます。これも落葉後、実が樹上に残ります。「栴檀は双葉より芳しい」のはビャクダンで、センダンは香りません。
薬師池公園の入り口に和菓子のような実がたくさん下がっていました(右)。サネカズラ(実葛)でつる性の木本です。樹皮から粘液をとって整髪に使ったのでビナンカズラともいいます。樹に絡んで這い上がると実をよく着けるようになります。 (1312)
シロオニタケ
秋はキノコの季節、町田の里山にもいろいろなキノコが生えてきます。シロオニタケ、特徴がこのくらいはっきりしていると同定に迷うこともありません。
菌類は他の生物またはその死骸に寄生しています。キノコは宿主に菌糸を延ばしていて、ある時期に菌糸が束になって独特の形を作って人の目に触れるようになります。そして胞子をまき散らして増える作戦です。
食べられるかどうかは経験豊かな人に聞くのが確実です。図鑑で調べただけで食べるのは危険です。因みにシロオニタケはよく分かっていません。毒ではないようですが、食用にもしていません。(1312)
ホタルブクロ
ホタルブクロ(キキョウ科)は里山で普通に見られる植物です。学名(属名)は Campanula で鐘を意味しています。かつて子どもたちが花の中にホタルを入れて遊んだのが名前の由来と考えられています。町田のような低地では淡い紅紫色ですが、山地では色の濃い花が多くなります。
よく見ると花の付け根にある、緑色のがく(萼)片の間に付属体があり、それが反り返っているものと、付属体のないものとがあります。付属体があるものをホタルブクロ(下左)、ないものをヤマホタルブクロ(下右)として区別されています。混在しているので、一つ一つ確認しなければなりません。
シャクジョウソウ
市内の里山で見慣れない植物を見付けました。ギンリョウソウの仲間でシャクジョウソウです。落ち葉を分解する菌に付く腐生植物です。葉緑素はなくギンリョウソウは純白なのに対して薄い茶色をしています。全国的に分布していますが、滅多に見られない植物です。150m程の低地で、意外な発見でした。栽培不可能です。(1306)
これもサクラ
今年の桜は気が早く、尾根緑道のさくらまつりは中止になりました。ソメイヨシノなどのゾーンに続いて八重桜のゾーンがあります。薄緑色のサクラが一本あります。ギョイコウ(御衣黄)(左)と名付けられた栽培品種です。これより色が薄く淡黄緑色のウコン(鬱金)(右)を見たいと思っていたら、山崎町・簗田寺の近くの農家の庭に立派な木がありました。
本町田小学校の校庭の一隅にウワミズザクラ(左)の大木があるのに気がつきました。総状に沢山の花を付けます。近縁のイヌザクラ(右)も咲き始めました。これは相模原市の東大沼で撮影しました。花序の柄に葉がないのが、はっきりした区別点です。(1304)
ネジキ
図師坂下日影公園のいわば奥の院は管理の手が行き届かない事が幸いしてか、ネジキ(左)があります。5メートル前後の小さい木で、樹皮がねじれるのが特徴です。やや近縁のアセビと同様に毒があり、動物は食べません。丘陵や山地の尾根筋を好むとされています。林床には多摩丘陵特有のタマノカンアオイ(右上下)が生えています。春に落ち葉の下で地味な花を咲かせます。シュンランも僅かに残っています。エビネもあったのですが、花を見た翌年にはなくなっていました。カシワバハグマやヤブレガサなどもひっそりと生き残っています。
タイトルを付けて守る運動も大切ですが、何と言うことのない自然をそっとしておいてもらいたいとも思います。(1211)
三ツ目山公園雑草挽歌
今年も三ツ目山公園の除草作業を担当することになりました。広い南面の草地には雑草がのびのびと育っています。定期的に除草しているので、生えてくる植物は毎年同じではありません。伐採に強い繁殖力旺盛な植物が主になってきます。一つ一つの花は地味でもまとまると景観としては美しさを呈するようになります。貴重なものでもないので、刈払いの対象になってしまいました。左:オオジシバリ、ジシバリ(イワニガナ)もありました。地縛りの名の通り地表に広がります。右:コバノタツナミ、小さい花が立っています。泡立つ波に見立てて立浪草といいます。
左:シロツメクサ、クローバーとして知られています。かつてパッキングに使われたので詰め草と。四つ葉は幸せの印。右:ムシトリナデシコ、茎の葉が出ている下の部分が粘ります。それで虫取りと、効果は疑問です。(1205)
沈殿池に集まる水鳥-2
横浜市水道局の相模原沈殿池に集まる水鳥その2 上段はヒドリガモ 灰色の嘴の先は黒いのが特徴です。左が雄で、頭から首が茶色で、頭頂は淡色です。雌は地味ですが、他のカモよりやや赤みが強く、嘴は雄と同じです。
境川でもおなじみの左はコガモの雄、右はマガモ雌雄です。コガモは名の通り小形で、雄の頭は緑と茶色のツートンカラー、ピーピーと可愛い声で鳴きます。マガモ(右)の雄は嘴が黄色で、雌の嘴は灰色で縁が橙色です。マガモを改良したのがアヒルです。区別しにくいこともあります。(1202)
沈殿池に集まる水鳥-1
相模原市の下溝に横浜市水道局の相模原沈殿池があります。相模原公園の向かいです。バードウォチングのポイントとしても知られています。久しぶりに訪れた1月始め、数は多くなかったものの5種の水鳥を観察できました。ここでは境川や恩田川では見られない潜るカモなどが来るので楽しみな所です。右のオオバンは全体が黒く地味な鳥ですが、くちばしと鼻筋が白く目立ちます。
これはキンクロハジロ、左が雄、右は雌です。なかなかおしゃれな鳥で、名のとおり雄は黒と白のツートンカラー、金色の目、頭の後に飾り羽(冠羽)があります。雌は色のコントラストが弱いので区別できます。潜水ガモの代表選手。(1201)
竹の花
相模原市の津久井でマダケが開花しているというので連れて行ってもらいました。竹は花を咲かせると地上部分は枯れてしまいます。(右)1960年代に全国的に開花しているので、近年の内に各地で花が見られるかもしれません。50年ぶりになります。花はイネと似た構造で、花びらはなくおしべの葯が外に出ています。お米のような実が出来ます。
小山田農地の周りにはハチクやマダケが生えています。一見花とも見紛う写真のような枝が無秩序に多数出ている株がいくつもあります。これはAciculosporium take Miyake といわれる病原菌によるテングス病です。放置されて密集し荒れた竹林で発生しやすいとされています。はびこると枯れたような状態になり竹林が衰弱していきます。伐採して燃やすのがもっとも良い対策とされています。町田市をはじめ、各地で猛威をふるっているようです。(1111)
里山の草花9月-少なくなった野草たち
珍しいという程ではないにしても、探しにくくなった仲間たちに出会いました。舞台は除草作業をした三ツ目山公園と石阪竹林です。左はヤマホトトギス。庭にも植えられるホトトギスより紫色の斑点が少なく白い感じです。花びらが下に反り返るのが特徴。右はツリガネニンジン。名の通り可愛い釣り鐘がいくつも下がって、葉も花柄も輪生しています。珍しく美形の株がありました。若葉は山菜トトキとして知られていますが、町田では食べるほどは生えていません。(1110)
左はコバノカモメヅル。蔓性の草で他の草に絡んでいます。濃い紫色の合弁花ですが、深く裂けプロペラのようにややねじれている姿は忘れられません。残念ながら刈られてしまいました。右はフジカンゾウ。蔓性のマメ科植物ですが、似た仲間がいくつかあります。比較的花が大きく、サングラスのような実をつけます。たくさんまとまって生えていました。
里山の草花8月-ヒルガオ科の仲間
ヒルガオ(左):残暑にめげず、フェンスや街路の植え込みによく育っています。朝顔と違って色の変化はほとんどなく、淡紅色の漏斗状の花を咲かせます。よく似たコヒルガオ(右)も普通で、葉の先が鋭く、花柄の上部にひだひだがありことなどで区別しています。
サツマイモ(左)も同じヒルガオ科の仲間です。関東では開花することはほとんどないのですが、野菜の花としては結構きれいな花を咲かせます。毎朝咲いて昼にはしぼんでしまいます。同じグループで小さな赤橙色で芯は黄色の花をつけるマルバルコウ(右)もあちこちでよく見かけます。江戸時代に渡来したとされています。(1109)
里山の草花7月-ツユクサ(露草)、ホタルブクロ(蛍袋)、ヘクソカズラ(屁糞葛)、ヤブカンゾウ(藪萱草)
梅雨時に似合う一日花のツユクサ(左)。3枚ある花びらの内2枚が大きく、清楚な感じのする青色が美しい。仮雄しべの先端が黄色く、花びらの青とのコントラストが目立つ。アオバナとか古名ツキクサとも言われ、親しまれている。
右のホタルブクロもよく知られている。かつてこの花にホタルを入れたところから名がついたという。仲間にヤマホタルブクロがあるが、よく似ていて区別しにくい。環境によって色の濃さが違う。概して低地のものは淡色である。
左はこれも分布の広いヘクソカズラ。蔓性の雑草で、悪臭がするのでつけられた名もひどいと感じる人もいて、花の中心がお灸の痕に似ているとしてヤイトバナの別名もある。
右はヤブカンゾウ、花は八重咲きになる。仲間のノカンゾウは一重咲き。ともに若葉はくせのない野草として知られている。「萱」は憂いを忘れる意味があり、ワスレグサの別名がある。(1108)
樹木の花6月-クマノミズキ(熊野水木),ムラサキシキブ(紫式部),センダン(楝),テイカカズラ(定家葛)
6月にまたミズキが咲いている?よく見ると葉や枝が対生していて、これはクマノミズキ。花もよく似ています。花びらが反り返っているのが違いでしょうか(バックナンバーで見比べてください)。 ”クマノ”はあまり意味がないらしい。
右はムラサキシキブ。庭によく植えられているのはコムラサキ。気がつきにくいのですが、近寄ってみると小さいながらきれいな花を咲かせています。秋に紫色の実をつけます。山のムラサキシキブは栽培種に比べると実付きがよくありません。
薬師池近くのコンビニのそばに大きなセンダン(左)の木があります。10本の雄しべがくっついて筒状になっています。実は葉が落ちても枝に残っています。薬用にされます。「双葉より香しい」栴檀とは関係なく、語源は不明です。
右はテイカカズラ。蔓植物は木に絡んで上に伸びると元気になりよく開花します。古歌にも登場します。愛する定家の墓にまつわりついたなんて伝説があります。花びらが巴形をしているのが特徴で、よい香りがします。(1107)
樹木の花5月-ミズキ(水木),エゴノキ,ジャケツイバラ(蛇結茨),ユリノキ(百合の木)
5月になるとおなじみの樹木の花が咲き始めます。左のミズキは遠目にも樹冠が白くなり目立ちます。大木ながら小さな花がたくさん集まっています。近寄ってみると花びらも雄しべも4つあることが分かります。春に切ると水がしたたることから水木。秋に6、7ミリくらいの丸くて赤ないし紫がかった黒い実がなります。右はエゴノキ、下向きに白い花をたくさんぶら下げています。地面を敷き詰めたように落ちた花で見上げると気がつきます。子どもの頃若い果実をつぶして川にいれ、気絶して浮き上がった魚を捕らえて遊んだ経験を思い出す人もいるでしょう。
大地沢の青少年センターにジャケツイバラ(右)があります。町田では多分ここだけにしかありません。派手な黄色い花で山の中に咲いていると目立ちます。蔓性の植物でとげとげの茎が木に蛇のように巻き付いています。イバラといってもマメ科に分類されています。右は北アメリカ原産のユリノキ(左)。チューリップの形をした花をつけます。街路樹としても植えられていますが、剪定されるせいか花がつきません。国際版画美術館の前にある並木で毎年見ることが出来ます。大木なので見上げないと気がつきにくい花です。葉がやっこさんのような形をしていてハンテンボク(半纏木)の名もあります。(1106)
春の谷戸-薺(ナズナ)、繁縷(ハコベ)、姫踊り子草、雀の槍
東日本大震災の影響で延び延びになっていた炭焼き作業が再開した農園には、これも遅れがちな春が訪れていました。普段は雑草として片付けられてしまう植物に思いっきり近づいてみました。小さな花もきちんとした構造を持っていることが分かります。左はナズナ、ペンペングサとして親しまれています。アブラナ科で花びらは4枚、実の形が三味線の撥に似ています。右はハコベ(コハコベ)で、ナデシコ科で5枚の花びらがそれぞれ2つに分かれているので10枚あるように見えます。ともに春の七草として知られています。身近なハコベの仲間にはコハコベ、ミドリハコベ、ウシハコベがあります。
左はヒメオドリコソウ、畑地などにしばしば大きな群れを作って生えています。葉の陰からこっそり覗くように小さな花を咲かせています。シソ科。また、普段はほとんど気がつかないイグサ科のスズメノヤリ(右)が土手の斜面に咲いています。この仲間は花びらがなく葯が外に出た姿で満開です。それにしても「雀の槍」のネーミングは人間が自然ともっと密接な関係を持っていた時代があったことを思わせます。(1104)
面高-オモダカ、子水葱-コナギ
水田の強雑草で、NHKのテレビではスーパー雑草として紹介されました。農薬にも強く、繁殖力も旺盛で、各地の水田で広がっています。コウホネ(左)の栽培種はクワイでおせち料理に使われます。マルバオモダカやヘラオモダカは東京都の絶滅植物です。逆に外来種のナガバオモダカは野生化し、鶴見川の源流池でも見られます。コナギ(右)は近縁のミズアオイ(水葱-古名ナギ)とともに万葉の時代から知られ、食用にもされました。夏、葉に隠れるように紫色の花を咲かせます。
左はコウホネ(河骨)、根茎が骨のように見えるので命名されました。水中葉と浮葉と水上葉の3種類の葉をつけます。自然では稀で、薬師池で保護されています。尾瀬にあるオゼコウホネはめしべの上部が赤くなっています。右のアサザも万葉の時代から知られ、食用にもされました。絶滅危惧種で、薬師池公園と小山田緑地のアサザ池で見ることができます。(1007)鬼の矢柄-オニノヤガラ
地面から何本も付きだした奇妙な植物を見つけました。オニノヤガラ(下左も)葉緑素を持たず、ナラタケと共生する腐生植物です。太いコナラの根元に生えていました。まっすぐに伸びた茎は1メートルにもなることがあります。いかにも鬼が使った矢の柄を思わせます。日本では広く分布していますが、町田の里山では嬉しい出会いでした。
地下に塊茎があり、この時期に葉のない茎を伸ばし、2~30個の花を咲かせます。(1006)
右のサイハイラン(采配蘭)も変わったランです。側弁が横に広がらず前に突きだしています。あまり開かない花も同じ方向に付き、武将が使った采配を思わせます。暗い林の中で咲いていました。葉は花が咲く頃に枯れ始めます。
十二単-ジュウニヒトエ
花が穂状に重なった様子をかつての女官の衣装に見立てて名がつけられました。日本の固有種です。町田ではジュウニヒトエ(左)が生える環境が少なくなっています。田中谷戸では開いた土手の斜面に群生し始めた様子が観察されました。来年以降が楽しみです。庭によく植えられている花色の紫が濃い同名の植物はセイヨウジュウニヒトエ(右)です。
シソ科には仲間が多く、ホトケノザ(左)、ヒメオドリコソウ(右)、カキドオシ(下)、キランソウなどは畑や空地に広く分布しています。春の七草のホトケノザはキク科のタビラコとされています。(1005)
八重桜
山野に自生するサクラは10種足らずですが、多くの栽培品種が植えられています。八重咲きのサクラも尾根緑道にたくさんあります。花期は品種によって違い、長く楽しむことが出来ます。花も長持ちするようです。関山(カンザン)(上左)は花色が濃く、重厚な感じがします(左)。白妙(シロタエ)(上右)は清楚な雰囲気を持っています(中)。普賢象(フゲンゾウ)(下左)は雌しべが2本あり、その形を普賢菩薩の乗っている象の鼻に見立てて名がつけられました。下右はヨウキヒです。その他、関山より色白の楊貴妃は妖艶なサクラです。 (1004)
蒲公英-タンポポ
在来種のカントウタンポポ(上左)と比べると、上右のセイヨウタンポポは総苞片が外側に反り返ります。外来種のセイヨウタンポポは繁殖力が強く在来種を駆逐しているとも言われます。よく見ると在来種もどっこいあちこちで生えています。しかし、見かけの在来種はほとんど外来種との雑種であることが分かってきました。自然は複雑です。タンポポは仲間が多く、アカミノタンポポは種子がやや赤く、関西以西ではシロバナタンポポが多く、「タンポポは白い花」が常識になっているそうです。最近背の高い、タンポポに似た花をつけるブタナ(下)を見かけます。茎が途中で枝分かれしています。 (1003)
冬芽
里山は「冬ぞ寂しさ まさりける」ことはありません。植物は春に備えて冬芽を用意しています。タラノキ(左左)のように硬い芽鱗に包まれて寒さをしのいでいるものもあります。ムラサキシキブ(左中)は薄着で裸芽といわれ、クロモジ(左右)は葉芽の脇に花芽を用意しています。冬芽は大小さまざま、形もいろいろ、葉の落ちた痕(葉痕)と合わせて角度によっては人の顔や動物の顔に見えたりして面白く、冬の里山の楽しみです。「春よこい、早くこい・・・」、ウグイスカグラ(右)は待ちかねて、1月にはひっそりと小さいピンクの花を開いています。 (1002)
虎の尾-トラノオ
寅年に因んでトラのつく植物を探してみました。相模原市立博物館に収蔵されている4万余の標本の中に18種ほどありました。すべて「トラノオ」が付いています。町田の里山で見られるのはオカトラノオです。昆虫ではトラカミキリとかトラフシジミの名が思い当たります。この植物がなぜ虎のしっぽを連想させるのかは分かりません。イネ科にはネズミノオという植物があり、いかにもそれらしいネーミングです。昔の人は、キリンやゾウのようにまだ見たこともない動物のイメージをふくらませていたのかもしれません。かくして大晦日の夜は中途半端に更けていきました。 (1001)
梅擬-ウメモドキ
ウメモドキ(上左)は庭木としてよく植えられています。本来湿ったところを好む植物で、小山田農地の脇にありました。赤い実が落葉した後も残り美しいので好まれます。葉がウメの葉に似ています。上右はツルウメモドキで、黄色い果実の皮が割れて赤い種子が覗きます。花材としてもよく使われます。ウメモドキと並んで植えられていました。同じモチノキ科の仲間にソヨゴ(下)があります。庭木として植えられます。赤い実が下向きにつきます。町田駅前の通りの街路樹としてエンジュの間に何本かありますが、気がつきにくいですね。近縁の種類にクロガネモチがあり、これは赤い実を上向きにつけます。小川3丁目に見事な並木があります。(0911)
紫式部-ムラサキシキブ
きれいな名前をもらった植物です。庭などによく植えられているのは上右のコムラサキです。実つきがよく色も鮮やかです。山に自生しているのは上左のムラサキシキブで、三つ目山公園にもたくさんあります。ただ、木が大きくならないと実がつきにくく、色も地味な感じがします。もう一つヤブムラサキ(下)が図師の山にあります。葉を触るとビロードのようです。果実は下側につき萼片に包まれているのが特徴です。(クマツヅラ科) (0910)